2020年の秋

 


近江八景を行く(6)唐崎夜雨
 その1

  跡地今昔 訪問 2020年11月27日(金) 午後4時 天気快晴

 コースは逆であるが、4景目で初日最後が唐崎夜雨の唐崎神社・唐崎の松であった。

 近江八景の情景歌題は瀟湘八景に忠実である。〝夜雨〟は八景の中では詩歌の面では兎も角として、絵画としては描きにくい情景である。先ず対象を選ぶのが難しい。そして夜の雰囲気と雨の模様を画面に表すことも難しい。そのため日本各地における八景選定の中では歌題から外されることが多い情景である。近江八景の唐崎夜雨はそんな危惧を一切感じさせない名歌に基ずく景観設定で、大和絵による画巻も浮世絵やそれに続く日本画家の作品も素晴らしい。

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近江八景・唐崎夜雨 

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 土佐光起 近江八景画巻(部分)唐崎夜雨 承応3年~元禄4年(1654~1691)個人蔵

 湖岸にそり出す一本松に暗い夜雨が降り注ぐ様子を描き出している。左に添えられている讃は上記の近衛信伊の和歌である。 

 下は何れも19世紀の作品で夜雨に染まる松の雰囲気に焦点を当てた絵である。松は近江八景当時に既に霊木として崇められていた二代目の松で、枝は東西54m、南北68mに及び湖岸に張り出していたと伝えられている。

 現在の松は3代目で樹勢の衰えが激しく治療中であるが、近江八景発祥当時の現場雰囲気が今に残る貴重な存在で、これからも大切に保存継承されていく事を願っている。

 

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唐崎神社の案内掲示板と神社ホームページ写真

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近江八景唐崎神社の拝殿(日吉大社摂社 唐崎神社ホームページより)

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樹勢が衰える前の(平成28年以前)現在の松(3代目)

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