旅先の思い出
旅先の思い出
ホテルのメモ紙〔18〕ドリントホテル
出て来たメモ紙を見て何処のホテルであったかすぐには思い出せなかった。
ネット検索でドレスデンが出てきて俄然記憶が蘇ってきた。
メサアイアのヘンデル協会ドイツ演奏旅行の帰路ドレスデンを訪れ、観光とオペラ鑑賞を楽しんだ。その時の宿泊ホテルがドリントであった。
ドレスデン宿泊 2004年2月28日~3月1日
正面街路から眺めたドレスデンのドリントホテル(現在)
玄関前広場に市電が通っていた思い出がある。
ドレスデンでは再建中の聖母教会を始め旧市内の観光やツビンガー宮殿・美術館など重厚なドイツ芸術に魅せられたが、一番の思い出はオペラ鑑賞であった。
ドレスデンの歌劇場はゼンパーオーパーと称してウェーバーを始めとしてドイツオペラの歴史的殿堂でクラシック音楽ファン垂涎の聖地である。昼間に観光で歌劇場の建物を見物したが夜にはオペラ鑑賞がセットされていた。
出し物がベルク作曲の歌劇ルルである。現代ウイーン楽派12音音楽のシェーンベルクの流れをくむ作曲家で強い関心を抱いているが難解な曲が多く近づき難い音楽である。オペラは専門ジャンルではないのでルルなどなお一層難しいのであるが、こんな時でないと鑑賞出来ないと思い、気張って準備し当日を待っていた。
夕食が終わってオペラ鑑賞のためホテルを出発するときに一寸したアキシデントが発生した。同行していた長野県の合唱団メンバーの集まりが悪く人数が揃わない。やきもきしながら20分ほど待たされていたのが下の写真の一階ロビーであった。
≪インターネットはすごい! こんな写真が見付かった!≫
右側階段上の2階踊り場で長野県合唱団が固まっていて中々降りてこず、時間だけが刻々と過ぎて行った。何をしているのかと怒りを覚えたが我慢して待ち、やっとの事で全員集合し、ガイドの案内で市電ですぐ近くのゼンパーオーパー広場に到着した。
小走りで一番近い入り口から歌劇場に駆け込み、劇場内に飛び込んだ。時間ギリギリである。開演間際で指定席を探す暇はなく、やむなくオーケッストラボックスと最前列客席の間の通路を観客に謝りながらやっと通り過ぎ最後部に廻り、空いている席にそれぞれ着席したら場内が暗くなりすぐに指揮者が現れて序奏の音楽が始まった。
≪これもすごい写真が見付かった。この場面を思い出す!≫
ルルは抜粋で聴いた事あったが全曲生鑑賞は勿論初めてであり、もともと難しい上に演出がシンプル超現代的で、時間遅れでプログラムも買えずセリフも判らず、落ち着きのないままでオペラは進行した。
本場の歌劇場で鑑賞するオペラは一生に何度もやってこない。1970年のウィーン国立歌劇場でのワーグナー、プチーニ、ヴェルディの3夜連続鑑賞のほかにはミュンヘンのバイエルン国立歌劇場でのリヒャルト・シュトラウスのナクソス島のアリアドネしかなくドレスデンは本当に楽しみにしてきたが、とんだアキシデントに見舞われて落ち着いて鑑賞出来なかったのが誠に残念であった。
時間だけ経過してベルクのルルは終わってしまった。終演して帰る観客の渦に押されて外に出る時に回廊で目にした装飾が僅かに眼に残っただけで、正面ロビーに施されている歴史的彫像・装飾物も全く見る事が出来ず誠に心残りであった。
歌劇場で記憶に残るのはこの場所だけである。情けない!
今回はドリントホテルのメモ紙が出てきて思い出が沢山蘇って来た。