旅先の思い出

旅先の思い出

ホテルのメモ紙〔22〕ホテル・ケンビンスキー

    ミュンヘン 2000年6月3~5日

       ヨーロッパ音楽めぐり・夫婦二人旅

          

                メモ紙

 ケンビンスキーホテルは数ある宿泊ホテルの中でも忘れる事の出来ない存在である。

予ねて念願であったクラシック音楽をヨーロッパの本場で体験したいと計画し、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団ミュンヘン国立歌劇場の入場券をミュンヘン在住の石川竜子さんに購入依頼し、ウイーンとプラハの演奏会日程も勘案してスケジュールを立て洋子と一緒に勇躍出発した。

 最初の訪問地がミュンヘンで石川夫妻の出迎えを受け向かったのが宿泊のケンビンスキーホテルであった。

        

          ケンビンスキーホテル(左側赤い旗)

 場所はメモ紙に記載されているがマキシミリアン・ストラッセで広い道路を真っ直ぐ数町下ると同じ側にバイエルン国立歌劇場に通ずる好位置である。

 ミュンヘンでも高級ホテルに数えられており、フロントに着いた瞬間から格式の高さが窺えた。歌劇場の公演に合わせた2泊3日であったが、部屋も食事もルームサービスも良く快適なホテルライフであった。料金も高かったがそれに見合った環境でミュンヘン滞在の基地として心地よい思い出を残している。

              ホテル客室と正面玄関

 お目当てのミュンヘン国立歌劇場へ2日間連夜の鑑賞で本場の音楽を堪能した。初日がオペラで2日目はオーケストラ演奏会と云う私にとってこの上ない組み合わせであった。ヨーロッパはやはりオペラがメイン・イベントですべてにおいて華やかさで満たさている。出し物はリヒャルト・シュトラウス作曲のナクソス島のアリアドネであった。

 オペラはオーケストラほどに精通していないが一応の知識と鑑賞経験を有している。最近は(と云っても20年前の当時の事であるが)古典的な演出が姿を消し、シンプルな演出が多くなっているようで当夜も舞台装置は簡略ですべてが現代的に推移した。それでもリヒャルト・シュトラウスミュンヘン生まれの大作曲家であることからミュンヘンの人たちの熱烈な拍手に感動して本場のオペラに溶け込んだ。

        

             バイエルン国立歌劇場

 第2夜のオーケストラ演奏会はバイエルン国立歌劇場管弦楽団によるマーラー交響曲第5番で指揮がケント・ナガノであった。出始めのホルンのソロから体が痺れたが、クラシック音楽に馴染み始めた頃から憧れていたオーケストラであることから本拠地で聴けた喜びで感激の極みであった。ケント・ナガノは日系カナダ人の世界的指揮者であるが、この後2006年から長くバイエルン国立歌劇場管弦樂団の音楽監督を勤めており、かれの指揮で大作曲家マーラーの第5番が生で聴けたのは音楽愛好人生中における一大好事であった。

 ミュンヘンのメモ紙には多くの記憶が宿っている。さらに言えば今現在我が親愛なる孫娘の真悠がミュンヘン音楽大学のマイスタークラスに在籍してピアにスト目指して研鑽中である。クラシック音楽教育界の最高峰とも云うべきミュンヘン音楽大学に孫が留学するど夢にも思わなかったが、才能に恵まれて研鑽に励んでいることは誠に嬉しい事である。

 出来ればもう一度ミュンヘンを訪れてその地で孫の演奏に接したいが齢90を前にしてはこちらこそ夢物語である。

        

 語り尽くせないほどの思い入れを持つミュンヘンを後にして、ケンビンスキーのメモ紙をケースに入れ込み、更に良い音楽を求めて旅だった。列車でウィーンに赴き、飛行機でプラハに飛び、再び列車でドイツに帰り、ベルリンとハンブルグを巡る音楽の旅を楽しんだ。